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患者(被験者)の募集について

本臨床研究における被験者(患者)の募集は終了しました。詳しくはこちらをご覧下さい。

臨床研究に関するお問合わせ

先端医療振興財団 先端医療センター病院
〒650-0047 神戸市中央区港島南町 2-2
電話:078-304-5200(代表)

 

 

加齢おうはん変性とは?

光を受容する網膜の中心部には、特に解像度が高く視力を担う「おうはん部」と呼ばれる部位があります。網膜は、受容した光を電気信号に変える視細胞を含む「感覚網膜(神経網膜)」と、それに寄り添う「網膜色素上皮(RPE)」と呼ばれる組織から構成されます。RPEは感覚網膜への栄養補給や老廃物の処理を担っているため、その機能が低下すると、視機能を担う感覚網膜の機能も低下してしまいます。

 

滲出型加齢おうはん変性

加齢おうはん変性は、加齢に伴ってさまざまな理由でおうはん部の機能が低下する病気です。滲出型加齢おうはん変性では、脈絡膜新生血管と呼ばれる異常な血管が生じ、この血管から血漿(けっしょう)成分が滲み出たり、出血したりします。その結果、RPEやさらには感覚網膜が傷害され、おうはん部の機能が低下します。症状としては、最初は視野の中心部(最も見ようとする部分)で、物が歪んで見えたり、小さく見えたり、暗く見えたりします。視力が急に低下することもあります。重症化して大きな網膜剥離や出血が起こった場合は、さらに広い範囲が見えにくくなることもあります。

 

発症要因

発症要因はよく分かっていませんが、加齢や炎症、遺伝的要因などによるRPEの劣化との関連が指摘されています。また、加齢おうはん変性には萎縮型と呼ばれるもう一つのタイプがあり、滲出型と合わせると、国内で50歳以上の方の約1%に見られるといわれています(1998年、2007年、久山町研究)。

既存の治療方法

既存の治療法は、主に脈絡膜新生血管と呼ばれる異常な血管の形成を食い止め、それ以上症状が進行しないようにするためのものです。新生血管が黄斑部の中心 (中心窩)に無い場合は、新生血管をレーザーで焼き、障害がそれ以上広がらないようにします。新生血管が中心窩にある場合には、抗VEGF薬を眼球に注射するのが一般的です。 VEGF は新生血管の発生と発育を促進する因子で、それを阻害する抗VEGF薬が複数承認されています。しかし、これらは新生血管の発生や増殖を抑えるための治療であり、新生血管を抑制できたとしても、一度変性した組織や網膜色素上皮( RPE )の障害は残ります。

より根本的な治療のためには、新生血管を取り除くとともに、傷んでいるRPEを再建する必要があるのです。

萎縮型(Dry type)の治療方法
 有効な治療方法はない
滲出型(Wet type)の治療方法
 抗VEGF薬硝子体注射、光線力学的療法(PDT)、レーザー光凝固など

 

 

臨床研究の概要

臨床研究とは

新しい治療法が一般的な治療法として認められるためには、その治療法に効き目があり、安全であることを確かめる必要があります。そのためにいろいろな試験をします。多くの場合は動物で試験を行った後に、人を対象とした試験へ、段階を踏んで進めていきます。このような、人を対象とする試験を「臨床研究」または臨床試験といい、新しい治療の効き目や安全性を調べる研究的な側面をもちます。現在、さまざまな治療を受けることが可能になっているのは、過去に行われた臨床研究に参加いただいた患者さんによりもたらされたものです。

この臨床研究は、「滲出型加齢黄斑変性」の患者さん本人の皮膚の細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り、それを網膜色素上皮細胞(RPE細胞)に変えて、RPEシートを作り、網膜の真ん中(おうはん)に移植することで、視機能の低下を防止し改善する新しい治療法の安全性と有効性を確認することが目的です。

はじめに、下記の点についてご注意下さい。

①この研究の対象疾患は「滲出型加齢おうはん変性」です。 萎縮型の加齢おうはん変性や網膜色素変性、糖尿病網膜症、緑内障など、他の眼科疾患は対象となりません。

②この研究の主な目的は安全性の確認であり、大幅な視力改善といった顕著な治療効果を期待するものではありません。

③この研究の被験者数は6名を予定しており、多くの患者さんが受けられるものではありません。

④この研究はiPS細胞を用いた臨床研究の初期段階にあります。この研究で安全性が確認された場合も、今後、新規治療法として確立し一般化されるまでには、長期にわたる研究開発が必要です。

網膜色素上皮シートの作製と移植

この臨床研究では、まず、患者さんの上腕部から直径4㎜の皮膚を採取し、高度に清潔が保たれた細胞培養センター(CPC)で培養します。この皮膚細胞から多分化能(様々な種類の細胞に分化できる能力)をもったiPS細胞を作製します。

このようにして作製した患者さん自身のiPS細胞から網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を分化させ、さらに、移植に適したシート状に成長させます。皮膚を採取してからRPEシートが完成するまでには約10カ月かかります。完成したRPEシートは、様々な試験によりその安全性と品質を確認します。

完成したRPEシートを新生血管を取り除いた患者さんの網膜下に移植します。このようにして、傷ついたRPEをiPS細胞由来のRPEに置き換えることで、視機能が維持・改善される可能性があります。

予想される効果とリスク

この臨床研究は、iPS細胞を用いた治療法開発の初期段階にあるため、安全性の確認が主な目的です。視力の大幅な改善といった顕著な治療効果を期待するものではありません。この臨床研究で安全性が確認されれば、治療法の確立に向けてさらなる研究開発を実施できると期待されます。
以下に、この臨床研究において予想される治療効果と不利益(リスク)を示します。

【予想される効果】

網膜下にあった新生血管と滲出液を除去し、移植した網膜色素上皮(RPE)細胞が網膜の機能を維持・改善することにより、視野の中心が明るくなり、視機能の低下を抑えられる可能性があります。場合によっては、わずかに視力が改善する可能性があります。ただし、これらの効果の有無や度合いは、患者さんの病状にも依存することが予想されます。

予想される不利益(リスク)】

事前に厳しい安全性試験を行いますが、移植したRPE細胞から腫瘍が発生する可能性を完全に否定できるわけではありません。また、皮膚の採取や全身麻酔に伴う有害事象、網膜の手術に伴う一般的な有害事象(出血や感染、網膜剥離、それらに起因する視機能への影響等)が起こる可能性があります。医師はこれらを注意深く観察するとともに、有害事象が起きた際には最善の治療を行います。
※有害事象:あらゆる好ましくない医療上の出来事

 

 

臨床研究スケジュール

患者さん本人から文書による同意を得た上で必要な検査を行い、選定基準を満たした場合、一次登録とします。一次登録後、皮膚組織を採取して培養し、約10カ月かけてRPEシートを作製します。

作製した RPEシートが規定の品質を満たすことや、患者さんの同意に変更がないことなどを確認し(二次登録)、RPEシートの移植を行います。移植後は1年間の経過観察、さらに3年間の追跡調査を行い、効果と安全性の評価を行います。

移植後の経過観察

RPE シートの移植後 1 年間を観察期間とし、最初の 6 カ月は毎月、以降は 2 カ月に一度、視力検査、眼圧検査、眼底検査、画像検査などの検査を行います。これらのデータに基づき、安全性の確認や視機能に対する有効性を評価します。観察期間終了後の3年間は追跡調査期間とし、年に一度、目の検査を行って経過観察します。また、皮膚採取前、 RPE シートの移植前、移植後1年経過時、追跡調査の最終年(移植後 4 年目)には総合的ながん検査を行います。合計4年間の観察期間と追跡調査期間の終了後も、より長期にわたって経過観察を続けます。

 

 

実施体制

この臨床研究は、理化学研究所と先端医療センター病院が、神戸市立医療センター中央市民病院の連携・協力の下に実施します。先端医療センター病院は患者さんからの皮膚細胞の採取、RPEシートの移植、および術前術後の検査を行います。理化学研究所は患者さんから採取した皮膚細胞からのiPS細胞の作製、iPS細胞からのRPEシートの作製を行います。また、神戸市立医療センター中央市民病院は、一部の検査や患者さんの選定支援、術中術後の緊急時対応を行います。

研究責任者

高橋政代(たかはし・まさよ)

理化学研究所
多細胞システム形成研究センター
網膜再生医療研究開発プロジェクト
プロジェクトリーダー

栗本康夫(くりもと・やすお)

先端医療振興財団
先端医療センター病院
眼科 統括部長

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